2010年11月某日 埼玉県内の新築ファミリーマンションにて

職人日記

寒くて早朝出勤が辛くなって来たある日、知り合いの工事屋から出動要請有り。埼玉県内新築ファミリーマンションでの工事。「そういえば春先にそんな話をしていたなぁ、かのフロ-ティング工法(「25年目の代償」)の現場だ。その割には今日まで何の相談も無かったなぁ….少しは前広に言ってくれよ」等と思いながら何人かを連れて出向く。

現場は案の定、遅れていた。既に巷で大問題になっている断熱材遅延が原因なのか?、それにしても何から何まで1週間以上遅れているらしい。「便りの無いのは良い便り」が、相変わらず現場では通じない事を痛感する。そんな事よりも、連れてきた職人は皆1週間以上の仕事確保を前提でここまで来たのに、遅延の影響でこれしか床工事出来なきゃ遊んじゃうよ!」電話を掛けて来た張本人の工事屋の担当に噛み付く。でも、ここ迄は良くある事。

問題は、この仕事が、かのフロ-ティング工法採用の物件なのに、工事屋は守るべきルールを全然、現場と打ち合わせしておらず、一切を職人に丸投げ=つまり現場の私任せで、何もかも「良きに計らって」ばかりで全然機能を果たしていない事だ。

この項で何度も述べている通り、フロ-ティング工法は必ず守らなければいけないルールがある。現場を問わず、それを貫徹する事は、この工法が普及していない日本では誠に至難の業であり、場合によっては現場監督と喧嘩してでも貫かなければならない

何故か?守るべきルールを守らないと、それは後々クレームとなって何十倍にもなって帰って来るからだ

この現場も遅延し捲り物件の典型で、精度が全然出ていない。アクセサリーも揃っていない。でも工事屋の言う事は「そこを経験値で、何とか上手くやって…」ばかり。フロ-ティング工法をきっちり根付かせようと言う意識が、まるで無い事に呆れるばかりだ。だから工賃もゼネコンの言い値。そこから自分の定額手数料だけはさっさと引いて、我々の取り分には全く事前の相談無し。これでよい仕事をさせようと言う方が元来間違っている。

職人は実際に床材を貼る人、ではその上に立つ工事屋の機能、って一体何ですか???

現場監督から直接聞かれた。「この商品、以前やって問題になったのだが、今回は大丈夫かい?」頭に来たので、こう答えてやった「さぁ全く判りません。だって工事屋が、工期内に言われた値段で収める事しか頭に無いからね、我々は言われた通りやるだけ。でも固いポリシーも、事前の相談も無いのに問題無く完工出来る程、この商品は甘くないよ。我々は押し付けられた仕事と割り切ってやるだけ、後は知らないよ」と。現場監督も返す言葉無く、黙りこくる。

例え準備がどんなに揃っても、最後は人が全てを決定する、のはどんな仕事でも同じ。これはホワイトカラーもブルーカラーも違わない。その人の意識が変わらなければ、どんなに良い製品でも悲劇の繰り返し、日の目は見ないのだ。

これからは、仕事を貰う工事屋をこちらから選別しなきゃいかんなぁ~と考えながら家路を急ぐ。