とても不思議な事….どっちが安いか?

職人日記

常々思うことがある….”どっちが安いか?”ここで書くのだから、勿論、対象は木質フローリングである。

木質フローリングで、エンドユーザーの満足度を上げる為には

①商品の付加価値を上げるべく、大幅なモデルチェンジをする方が安いか?

②それとも、それ以前に、施工上の満足度を上げるべく、現行商品のマイナーチェンジをキッチリする方が安いか?

である。

衣類、家電、車等なら、言う迄も無く①。でもフローリングは①だろうか?フローリングは商品を買って来たら、それで終わりだろうか?いや、違う。そう、買ってきたら取り付けなければならない。そして忘れてはならないのは、フローリングの完成度の要素の半分は「施工の上手い下手が決める」と言う事なのだ。

ラワン合板に代表される環境規制、製造上の省エネ、施工上の省力化、そして製品の色ムラ排除、耐傷性向上、メンテナンス省力化等々、各メーカーが血眼になって、自社フローリングの差別化を図って、しのぎを削っている事は言う迄も無い。飽くなき理想形の追求と言えよう。でも、エンドユーザーは、どこまでこの開発競争が行っても、多分100%満足しないだろう…それが消費者だから。これはフローリングに限らず、何でも一緒だと思う。

ここでフローリングに関する今の日本の商慣習を話そう。残念ながら、国産メーカーが直接施工に関与すると言うケースは、まず無い。せいぜい分厚いカタログの最後に、施工要領書が付いている程度。そしてこれを律儀に読む人は、DIYでやろうとするユーザー位しかいない。分業制と言えば聞こえが良いが、要は皆、自分の守備範囲を自ら定め「それ以外の範囲は、ボールが飛んできても知りません」が実情である。

これは逆に言えば、国産メーカーの商品開発は、エンドユーザーを喜ばせる性能面ばかりを追及し、施工はいつまで立っても職人任せと言う事の裏返しである。

商品の性能面を追及すれば試作、試験に加え、今のラワン合板代替にどこも必死の状況では、その基材を広く国内外に求めざるを得ず、結果、莫大な金額を伴う投資案件になる、そしてそれは全てコストに跳ね返る(今の経済状況で、多少の性能差別化が、売値を底上げするとはとても思えないが)

この様に、性能面を追及するしか手は無いのか?……いや、違う。現場からの声を、現行の商品にきっちり反映させれば、比較にならない程の少額で具現化し得る”カイゼン”は一杯有る。

如何に現場の声を吸い上げ、それを理論化して製品に反映させる、と言う作業は、いったいどこの国産メーカーがいつになったら実行するのか?これだけ集合住宅が落ち込み、どこも苦境に喘いでいる中で、そんな作業を敢行出来る先は、片手ほども無い。

どんな素晴らしいフローリングでも、最後の満足度は全て施工あってのもの、と言う現実を省みずに、100%に近い完成度及び満足度を、フローリングそのものだけに求める今の風潮を、とても嘆かわしく思う。また、そうしている内に、体力を消耗し、破綻してしまう国産メーカーが出ない事を祈る。