職人から見たシートフローリング

職人日記

日本に長い事住んでいるヨーロッパのフローリングメーカーの人間と話す機会があった。海外の専門家と日本語で話せる機会は滅多に無いから、思いもがけずフローリング論で盛り上がった。

最も印象的だったのは、何を以ってフローリングと言うのか?と言う事。欧州巨大建材メーカーの駐在員と、日本の一職人の意見が見事に一致した。

欧州の様に、住宅を含む建物全てが長い歴史に支えられた文化では、研究し尽くされた材料が、莫大な使用実績の元に「フローリングとはどうあるべきか?」「最も合理的な施工方法は、どうあるべきか?」昔から変わらぬ理念に基づいて商売が成り立っていると言う。

一方で、日本では相変わらず、ラワンを使ったベニヤ板に化粧材を貼り付けるだけ、それがフローリングの主流であり、糊もどっさり使って、がちがちに固定する。日本の気候を考えれば、それなりに考えられた商品と工法だが、いつまでたってもベニヤ板の上に貼る化粧材を替えているだけなのは、技術立国の日本では頂けないのではないか、最近は頓にその傾向が酷くなっている、と言う。

その代表例がシートフローリングだ、と。これをフローリングだと思って買わされている日本の消費者は可哀想だとまで言う。

御意。何故か?

見かけの安さと、物を作る側の都合だけで生まれた商品だから。エンドユーザーそして我々職人の思いなど蚊帳の外。シートフロアは、日本独特のカラーフロアが更に世界標準から遠ざかった典型だ、とさえ思う。竣工時に供給者側にリスクが少なく、安くあがればそれでいい、そんな思いだけが余りにも強過ぎしはしまいか?(職人日記「シートフローリングの皮が剥けた」「流行のシートフローリング」参照)。

日本の技術は世界一だろう、でもフローリング文化と言う視点で考えたら、日本は進歩どころか年々退化している、とまでその外国人は言う。

次世代には、寿命が長く、いつまでも普遍的な価値を持つ本物だけを残したい….こんな思いは何処の国の人も同じだろう。

「高級品は無垢、普及品はラミネートフローリング(日本ではカラーフロア)」….
これは国を問わず、木質フローリングが行き着いた答え。この「普及品」が、時代の進化と共に、僅かづつでも”底上げされて行く”、こんな当たり前の事を願う我々の思いは、何時になったら叶えられるのだろうか?