2006年7月某日 千葉県の個人邸にて

職人日記

築15年以上になる戸建住宅のリフォーム後、フローリングにトラブル発生との事で、呼び出される。
行って見れば、酷い※カップリング、框はおろかアルミサッシまで歪めてしまうほどの伸びが、フローリングに発生していた。

材料は量販店の店頭で買ってきた楢15mm厚の※無垢フローリングだが、ともかく信じられない程の悪条件下での施工であり、製品のせいでは無い事を直感。

土土間(つちどま)に渡した低い根太にそのままフローリングを施工。
根太の上に捨貼合板はおろか、断熱材、防湿シートさえも無い。

これでフローリングが暴れない訳が無い!、まして無垢なのに。

実際に施工した大工に拠れば、※スペーサーどころか説明書も無く、裸のままで売っていたので、適切な施工方法が判らなかったと言う。
店にすれば、コスト下げるが為の日常的な売り方なのだろうが、それにしても僅かな判断ミスで、家が壊れるのでは………と施主が恐れるくらいのカップリングが発生。行き着く所は、フローリング全面張替とは……あまりにもその代償は大きい。

それぞれに言い分はあろうが、ともかくフローリングへの予備知識不足がもたらした悲劇の現場に直面し、いつも感謝される仕事をしたいと心掛ける職人としては、なんとも切なくなった現場であった。

※カップリング:
フローリングが幅方向に丸まってしまう事。そのサイズの中で、部分的に過剰な水分もしくは乾燥し過ぎの箇所があると発生するが、木目に左右される場合もある。

※無垢:
合板等の加工した木材を一切使わず、木材をそのまま削りだし、そのままで使用したり、塗って仕上げるなどしたもの。

※スペーサー:
フローリングの幅方向の伸びを想定し、施工時に、その個々のピースもしくは壁際との間に意図的に空ける隙間を作る際に使用する道具