材だけでは売れなくなったから……

職人日記

フローリングを売っていた先が、工事まで手を出す事 が珍しくなくなって来た。それも目先を変えて、無垢の研磨だって。研磨自体は時勢に応じて、良い物を長く使おうと言う事で大変結構だが、それを導入する先の台所事情はそう簡単では無い。

一言でいえば、売上を更に上げるのではなく、材だけでは売れなくなってきて、止むを得ず工事に手を付けるのだ。材だけ”順調に”売れていれば手離れは良いし、何も変える事は無い。しかしながら我が木材建材業界において、消費増税後のこんなに 長く続いている不振、全く恩恵に預かれないインバウンド需要、要はどうにもこうにも販売予算の達成が、そして事業の成長が見込めなくなって来て、気の進まない分野に手を付けざるを得ないのが工事に手を染める販売屋の本音、と思うのは私だけだろうか?

それはそれで、生き残る道の模索なのだけれど。

”無垢フローリング再生”と言えば聞こえは良い、で、彼らがまず売り込みに行くのは過去に売った事のある客。これまでは売りっ放しで成り立っていたが、要はそれが通用しなくなり、付加価値を上げないと落ちて行くだけなのだ。

無垢床材の再生とは、内装材を資産とみなす欧州ではとっくの昔からある事、それがやっと聞く様になってきた事は、日本人のフローリングに対する意識がやっと変化して来た事の何よりの証であると共に、これ迄の安直な商売、すなわち誰でも、何処でも買える、そんな汎用品を値段だけで売ってきた日本全国有象無象のフローリング販売屋の淘汰が、いよいよ始まっていると言う事なのだ。