甘くみてはいけない施工後の床の全面研磨

職人日記

現場で知り合った地場のビルダーの監督から問われる。
「施主が奮発して入れた国産杉の圧密無垢フロアで、UV塗装の一部剥がれが起こり、艶まで元に戻せ!と言われて難儀している。費用はフローリングメーカー負担に出来そうだから、いっその事、全面サンダー掛けしようと思うが、注意点教えて」と。

答えはノー。直す職人が専用の自走式大型サンダーでも用意していない限り、不可能!施工後のフローリングの全面サンダー掛けは、実は最後の最後の手段。これをやっても問題解決しなければ、もはや貼替しか無し。だから専用のマシンが無ければやるべからず、これが私の30年に及ぶ経験値だ。そしてそんなサンダーマシン、実は国産品で、いまだかつて見た事が無い。フローリング先進国の欧州品の製品で、ここ数年やっと期待に値するものが入ってきた所だと言うのが私の理解。

監督に聞いてみた。「どうやって研磨するつもりだったんだい?」
「ハンドサンダーで人海戦術だ」。あちゃー、これも全く論外。

通常、ハンドサンダーとは#150以上のペーパーを使っての研磨目的。つまり表面の毛羽立ち除去など、最終仕上げの手段。だから水平面への力もあまり掛からない様になっている。目的が仕上げ研磨だから当然。

これに対し、今回のケースは何層もの工場機械塗装で、ばっちり仕上げてあるフローリングを、素地まで削り出そうと言う物。こんな場面でハンドサンダーは不適。むざむざフローリングに余計な傷をつけながら、ムラだらけの素地を擦り出している様な事になる。当たり前だが、素地後の再塗装を考えたら、素地はもっとずっと粗い番手から順を追って、ムラ無く、平滑に、均一に仕上げる事が絶対条件なのは、火を見るより明らか。それには接地面に一定の荷重が均一に掛けられる専用サンダーは必須なのだ。

ややこしいのは、素地(下地)のムラと微妙な凸凹は、塗って見ないと判らない。だからそれが判った時にはもう手の施しようがない。つまり貼替だ。

やる前に相談してくれて良かった、良かった。監督には、まずUVメーカーとコンタクトを取り(UVにも成分次第で相性有り)、そして部分UV塗装のこなせる連中を別途紹介する。

ただデカい面積を削るだけだろ!って単純に見えるけれど、施工後のフロアーの全面サンダー掛けこそ、この道30年の私でさえ、いまだに最も慎重に構える難度の高い作業なのだ。