初期動作の大切さ…ミスがミスを呼ぶ現場

職人日記

知り合いの工事屋から頼まれ、正月早々、松戸の戸建に出向く。堂々たる和風新築物件、桐の無垢フローリングの塗装の剥がれが直らないと言う。元々の施工も補修も、彼が手掛けたのではなく、困った施主からの直々の依頼だと言う。

早速、朝一から乗り込んで現場を見る。桐のフローリングとはまた拘った商品、柔らかい素材であるが故に、何とUV塗装が施してあった。施主が海外出張の折に気に入って、わざわざ個人輸入で取り寄せた中国製を、工務店に依頼して敷いた物だと言う。

剥がれは大層な面積では無い。が、触った傍からポロポロと表面が崩れてくる。何だこりゃ?翌々聞けばこれで、入れ替わり立ち替わり3社の補修屋が直したんだとか。で、暫く経つと剥がれるを繰り返しているのだとか。施主は困り果て、材料取り寄せるからと、部分貼り直し迄思い詰めているから、さぁ困った。こんな柔らかい樹種の1枚交換なんか出来ないよ、形而変化が大きいだろう、従い既に施工してある廻りのピースといずれ”目違い”が起こる事、免れない。

理由は何だ?しょっぱなの症状を見ていないので確定は難しいが、剥がれてくる塗装片を見る限り、UVとは全く違う物で補修しているのは明らか。

これはまずいよ、同じ床材の塗料とは言えど、それぞれ性質が全然違うから、同じ物で無ければそう簡単に吸着しないのは明白。

一体、どんな補修を施したんだ?

補修屋が施した作業は、どうやら簡易補修キットで埋めてから、何かのコーティングを施したらしい。それじゃUVとは相容れないよ。それを繰り返した事が主な原因の様だ。今はUVの部分塗装と言う手段もある為、その専門業者を薦める。が、中国製のUVと日本製のUVの相性は良いのか?そこまではUV屋でないと判らない。

それにしても悔やまれるのは初期動作の間違い。施主が知る由も無いので、要は補修屋の予備知識不足だ。これが充足されていたら、金も時間も人出もずっと節約出来たろうに。

「知り合いのプロを紹介します。お金は要りません」…これまで関わった補修屋は、多分皆同じ事を言ったのだろうな、割り切れぬ思いで現場を後にする。