25年目の代償

職人日記

暑くなってきた頃から、どうも体調が悪い。体中に発疹が出て、なかなか引かない。止む無く病院に行ったら、何とアトピー性皮膚炎と診断された。この歳になって…と、一番驚いたのは他ならぬ本人である。

「薬品を使う仕事ですか?」「であれば、どんな類の薬品に触れる機会が多いですか?」医者から聞かれて思い当たる節は、施工時に使う接着剤しか無い。

揮発成分を含まぬウレタン系もあるが、速乾性や接着力の強さから揮発成分を微量に含むエポキシ系は、まだまだ現場では手放せない必須な副資材の1つ。どちらも☆☆☆☆は当たり前。規制の厳しい日本だからこそ、国産品でこの基準をクリアーしていない物は存在しないだろう。

我々も好き好んで、糊をベタベタ使っている訳では決して無い。
限られた時間、暴れやすい材料、ギリギリの手間代そしてクレームを起こさないという条件の中で、フローリング職人稼業を商売として成り立たせる為に、最大限の効率を追求するのは、皆、同じ。

長年のアスベストに纏わる作業に従事していた労働者、そしてアスベストを使う製造工場の近隣住民に中皮種発症が劇的に多いのは報道の通り。分野が違うから、と他人事の様に思っていたのに、まさか床職人にも、こんな形で弊害が出て来るとは思わなかった。

私だけか?それとも実は、潜在的に同じ様な事例が沢山あるのか?
誰も真偽の程は判らない。

出来る限り化学品を使わず、化学品以外の副資材も最小限に、そして工事の手間も簡素化したい、これは職人、皆共通の思いだと信じる。だったら、仕事が無くなる!?そんな事は全くありません。プロで無いと出来ない仕事は増々増えているのです。

痒い思いをする人がこれ以上増えない様に、糊と釘を使わない”置き敷工法”(フローティング工法)が、少なくとも普及帯のフローリングで、早く世に広まってくれる事を、切に願う。

※フローリングの置き敷(フローティング)工法
糊と釘を一切使わないフローリングの施工方法。小さなピースを巨大な一枚の板とさせて部屋に置くという発想。従来ほど副資材を使わず安く上がる事に加え、施工が早く、また撤去もし易いと言う極めて合理的な工法。一方、施工時には、必ず壁際にクリアランスを儲けてやるなどの幾つかのコツがあり。海外では当たり前の工法として普及しているが、日本は正反対の、糊と釘でがちがちに床材を固める工法(グルーダウン)が一般的。